クレアオーディエンス(霊聴能力)→ 現実的には、そこにいない、人の声や物音、宇宙の金属音など、頭に鳴り響いたり、ささやくように耳元で聞こえたする能力。守護霊や亡くなった人からのメッセージが聴覚を通して感じることもある。
ねねの自宅は、2DK+ロフトの間取りの一軒家である。15坪の狭小住宅なので、いかに広く見せることができるか、建て替えの時、専門の建築業者さんに頼んでデザインされた家だ。わたしにとってはお気に入りの物件なのだが、仕切りがほとんどない風通しのよい部屋なので、こども達が大きくなるにつれ、さすがに、落ち着かない様子を見せ始めていたものだった。
「ママ部屋が欲しいよ~・・・。だってぼくたち喧嘩ばっかりだもん。」
と口を揃えて言うむすこたち。
だんな様は、だんな様で、会社を設立したばかりで、近所に事務所を構えたいと、物件探しに夢中なご様子であった。
「あっそうそう、いい物件みつけたんだよ。ここから5分ほどのマンション!!駐車場も広くて、仕事の道具も運びやすそうでさあ~。しかも安いんだよねー。」
ちょうど去年の今頃、わたしの家は、ばたばたしていて、物件をひたすら探しているような時期であったのだ。
ある週末の午後、夕飯の身支度をするため台所で野菜を切っていた。居間では兄のたっくんがソファーに寝そべり、スマホをいじって寝そべっている。台所と居間をあわせて12畳ほどで、50インチのテレビが壁にかかっているような、台所と居間が一体型の部屋なのである。
しかし、事件は何気ないつもの日常の中で、突然起きたのである。野菜を切っていると・・・どこからか、
「うぉっ~~~~~~っ!!』
という、男性の低いうなり声が聞こえてきたのである・・・。
実は、昔から、この声・・・わたしには聞こえてくるのだ。この低い声で朝起こされることもあるぐらいなのだがら、とにかくおっかない。地獄からの地響きのようなおそろしい声であり、人間の声とは到底思えないのである。
わたしはもうなれているので、気にすることはないと、ひたすら野菜を切り刻みつづけていた。だって、どうせ・・・わたしにしか聞こえない声であるからだ。人と共有できるものでもない・・・。頭おかしいと思われるから、誰にも言えないよ・・・。
にんじんをトントン切り続けていると、
兄のたっくんが大きな声で、
「ママ!!ママ!!」
とわたしを呼ぶではないか・・・。
「っんんっ!?なに?どうした?」
野菜を切る手を休めて振り返ると、息子は、ぷるぷる震えている。
「今・・・今さあ、男の人の声がしなかったあ?!すごく低い声!!」
息子は少し青ざめた顔になってきている・・・。
こりゃいかんと思ったわたしは、息子の気をそらそうと、
「たっくんのスマホじゃないのっ?!」
と、スマホのせいにしようと試みてみた。息子には変な世界を知られては困ると思ったのだ。
「違うよ!!スマホ今いじっていなかったもん。テレビ!!あのテレビから聞こえてきたよ。!!」
たっくんが指さしたのは、居間の壁にかかっている大型のテレビだった。(このテレビは、その後、勝手に電源がつくようになったテレビでもある。)
しかし、電源はついていないのである。テレビの電源はoffなのだ。
「たっくん・・・テレビはついていないよ・・・。まさか、本当に聞こえたの?あのさあ、あの地響きみたいなおじさんの声・・・もしかして聞こえたっ?!すごくないっ?!。たっくんにも聞こえるの?!」
たっくんの元へと駆け寄った。
「うん、聞こえたよっ!!ママ。」
わたしは急にうれしくなってしまった。だって、自分にしか聞こえないと思っていた声が聞こえる人が、ここにもいたからである。
ある意味、わたしの話が本当だと認めてくれる人物が目の前にいるのである。
それが、まさか自分の息子とは!!
「たっくんたっくん、手を見せて。」
たっくんの手には、わたしと同じ、神秘十字のマークが刻まれていた。
手相で言うと、神秘十字を持つ人は、霊感の強い人が多いのである。
「ああやっぱり・・・。ママと同じ手相だわー。嬉しいような、哀れなような・・・ふくざつだわね。」
わたしは、うれしい反面、この声が二人に聞こえてきたいうことは、何かの強いメッセージがあると、すぐに身構えるポーズをとってみた。
なんだろう・・・何を知らせたいんだろう?。低い声のおじさん・・・。
「たっくん、今何時?」
「15時だよ。」
「じゃあ、15時って覚えておいてね、声が聞こえた時間って大切だから。何かあるかもしれないからね。」
そういって、私はすぐにスマホに今の出来事を入力しておいた。
その日の夕方18時頃、だんな様が帰宅してきた。
「いやぁー。まいったよー。」
と疲れているご様子。
「どうした?仕事で何かあったの?」
「いやいや、今日さあ、あの例の物件。家から5分ほどの緑風マンション。不動産屋さんに行って契約しようと思ったらさあ。そしたら、何て言われたと思う?!」
わたしは嫌な予感がしてきた・・・。
「あのね、あの物件・・・サイトにものっているような、ちょー有名な事故物件だったんだよ・・・。それでもあなたは借りますか?!ってまじめな顔で言われてさぁ~・・・。どうやら自殺らしいみたいだよね。」
でたぁっ~~このパタァーン!!
はぁ~と思わずため息をもらすわたし。
わたしに何かの映像や音が聞こえると、必ず、だんな様が、実はここは事故の現場なんだよ!!といいはじめる、夫婦のお決まりパターンなのである!!。
勘弁してくれ!!こわい!!。
「それさぁー何時ごろ、不動産屋さんに行ったの?」
おそるおそる聞いてみた。
「15時ぐらいかなぁー。」
ほらでた。やばいやばい。
わたしとたっくんが、テレビの方から、男性の低いうなり声を聞いた時間とピタリとあうわけである。
やっぱりやっぱりやっぱりぃー!!。
「そこには住まないほうがいいねっ!!。」
そう、低い声のおじさんは、いつもわたしに警告をくれる存在なのである。怖いなんて言ってしまってごめんなさい。むしろいつもありがとう。!!
わたしが今晩のメニュー、バターチキンカレーをどぉ~んとダイニングテーブルに置くと。
「今度は、クラムチャウダーもお願いします!!あれ美味しかったよ!!また作ってね。」
と言いながら、だんな様はビールの缶の蓋をプシュッとあけて、勢いよく喉に流し込んだ。
わたしたちの家族は、その後、
会社の事務所をこの一軒家に構えることにして、住まいを近所のマンションにして引っ越すことに。そして、一件落着となったのである。