真夏の空、大きな入道雲の下には、近代的なお洒落なマンションがそびえ立っていた。大きなコンクリートの滑り台がある公園の坂道を、真夏の太陽がジリジリと照らす中、わたしは、児童養護施設出身だと思われる音楽家さんへ会いに行く。
macbookの中には、今まで作った楽曲が収められている。とりあえず聞いてもらって、これから先のことを相談しようと足を速めた。高級住宅街にあるこの超巨大な都市型マンション。ここに住むとは・・・さすが、メジャーレーベルでご活躍された音楽家さんである。
ピンポォーンっ!!
「はい、ようこそいらっしゃいましたね。さあ、どうぞっ!!」
迷路のようなマンション内を少し迷子になりながらも、なんとかたどり着くことができた。いよいよ、ご対面である。
児童養護施設出身の音楽家さんのお部屋は、大きなガラス張りの部屋となっており、たくさんの観葉植物が飾られている。
とても体が大きな男性の音楽家さんは、どことなく映画プラトーンで活躍した、アメリカの俳優、ウィレム・デフォーに似ていて、ハーフのようにも見える。
「こんにちはっ!!ねねさん。昔歌を歌っていたんだって?」
はじめてのご対面である。まずは、自分の音楽歴史から話さないと。
「かれこれ20年以上前ですかね・・・。バンド活動をしていて、ライブハウスでとある音楽振興会からスカウトをされました。そして、育成アーティストとして鍛え上げられました。レコード会社のイベントで、賞をとることができましたが・・・デビューせずに、引退しました。」
わたしにとって苦い思いである。
「なんで?デビューを断ったの?」
そこ聞かれるよね・・・。
「なんか・・・怖くなってしまいました。」
うんうんと、ウィレム・デフォー似の音楽家さんは、うなずいている。
「あなたの時代は、まだ、プロデューサーがうるさかった時代だからね。そのままデビューしても納得のいくデビューだったかはわからないよね。歌手だって言っているのに、アイドル化されちゃうこともあるしね。お子さんはおいくつ?」
ああ・・・話がわかる人っぽいな・・・よかった。
「子どもは高校生になりました。手を離れるようになってきたので、また、音楽活動したいなって思っているんですけど。メジャーはもう懲り懲りで。保育士だったので、支援活動もしていて。実は『音楽と支援を統合』させたいなって思っているんです。」
わたしは嘘つくことなく、最初から本音で話そうと思った。
「ほぇーっ!!支援ねー。いやいや、実は、僕もメジャーでの仕事以外で、ユニットを組んでいてね、三人組で。支援音楽をやろうと動いているんだよ、子どもたちに向けてね。いずれNPO法人にしようと思っていて、いろいろな手を使って、組織を作ろうと。同じだねっ!!君と同じようなこと考えているっ!!」
わたしは、口をあんぐりしていた・・・。ほらほらほら・・・やっぱりねぇー。何で、天界からメッセージが降りてきたかの理由が、やっぱりここにあったのだっ!!
児童養護施設出身の音楽家さんに会いに行けよっ!!の天界からのメッセージは、この音楽家さんが、『支援と音楽を統合』させようとしている人だったからなのだっ!!
さすが、高次元っ!!余計な遠回りはさせないんだねっ!!わたしに。
そして、わたしは、自分の曲を聴いてもらった。もちろん、ダメだしいっぱいだったけれど。年齢も年齢なので日本のメジャーレーベルはさけて、音楽をお金にする方法を考えようと。いずれ音楽チャートでランキング上位になれるよう頑張ろうという話になった。英語で歌うので、海外の人からも聞いてもらえるように。
ふと、児童養護施設の音楽家さんのパソコンを見たら・・・なんと、大きな黒猫の写真が待ち受け画面になっているではないかっ!!
「もしかして、黒猫さん好きですかっ!!」
わたしは、大きな声で指をさしながら聞いてみた。
「猫大好きなんだよ。黒猫はかっこいいじゃん。なぜか、猫からすごい好かれるんだよね、俺・・・。自分では飼っていないけれど、友達の猫とかよく預かるよ。!!」
わたしがずっと映像で見えていた、真っ黒なものは、なんだあ・・・・この黒猫だったのかっ!!まっくろくろすけの黒猫ちゃんだっ!!
霊能力者であるティカーベルのお方が言う通り、会えば理由がわかるとのことは、このことだったのか。
天界からのメッセージは、児童養護施設出身の音楽家さんに会いに行けよ。→その理由は、音楽と支援の統合を目指す、やがてNPO法人を作ろうとするような音楽家さんだったから。
児童養護施設出身の音楽家さんの写真を見ると、真っ黒な生き物のような映像が頭に浮かんで、わたしは怯えていた。→その正体は、黒猫が大好きな音楽家さんであったからだった。
もしかして前世が黒猫だったのかな?それともこの方、おそらくスターピープルだから、地球外生命体で真っ黒な生き物だったのかな?
「ぼくはね。自分がないんだよ。何にでも変化ができる。だからこの作曲家・編曲家の仕事をしているんだ。アーティストが輝いて旅立つことに幸福を感じるんだよ。みんな旅立っていく。だから、アーティストはわがままで気が強い子の方が僕には合うんだ。そうじゃない子は、この業界でみんなだめになっているから・・・。僕はさみしくはなるけれどそれでいいと思っている。ぼくの役割なんだ。だから、厳しいよ。自分一人でできるように育てるからね。そうじゃないと甘えるからね。戻ってくるなと僕は手を放す。そういう仕事なんだ。」
このまっくろくろすけの黒猫のお方は、まるで魔法使いの使い魔である黒猫のようだなと思った。何にでも変化ができる、魔法使いの使い魔の黒猫みたいだ。
わたしはスターピープルなので、同じ場所に長い間とどまることはできない。期間限定の人なのである。学びが終わったら、次のステージへと行かなくてはならない。波動を挙げて高次元へ行くのが役割だから。そして、周りの人たちのことも高次元へと導くのがお役目。だから、このまっくろくろすけの黒猫のお方は、わたしにとってちょうどいい距離感の人なのかもしれない。ちゃんとさよならができる人だっ!!
いざ前進であるっ!!。